熊野達彦「カニは凄く速い」

ちょっとだけ体温の高いイヌ、麦茶を飲み干すネコ、城壁登りがやめられないクマ、ベンチからどかないカメ、全ての雨粒を避けるアメンボ、草の根っこになる魚、凄く速いカニ…。

各1ページ、2コマから5コマほどのうちに独特のディテールと間（ま）で表現される”あるわけない”と”あるかもしれない”のあいだを行ったり来たり漂うような、動物たちのシュールでナンセンスな会話と所作と想念。一編ずつだとありえないことでも、続けて読むうちに世界の未だ見ぬ摂理への扉が徐々に開いていくような（気もする）、脱力系ならぬ「脱臼系」数コマ漫画集。京都のワインショップ［仔鹿］の出版部門［こじか社］よりリリース。そして描かれる動物たちは常にかわいい。